28歳のとき、植木屋でクビになった。
試用期間3ヶ月が終わった日に呼ばれて、「あなたはこの会社に合わない」と言われた。その後、社労士からの通知書が届いて、完全にシャットアウトされた。
緑の仕事がしたかった
それまで事務仕事や工場でしか働いたことがなかった。
書類を処理して、ラインに立って、決まりきった仕事を繰り返す日々。そのうち「なんか違う」という気持ちが積み重なって、「緑に関わる仕事がしたい」と思うようになった。
人間と仕事するのがしんどくなっていた時期でもあった。相手が人間じゃなくて植物なら、まだましかもしれない。そんな気持ちもあった。
職安で見つけた植木屋に応募して、採用された。
入ってみたら、全然「考えなくていい」仕事じゃなかった
正直なところ、植木屋というのは「体さえ動けばできる仕事」だと思っていた。
甘かった。
まず技術が難しい。剪定は「どこを切るか」の判断が要る。ひもの結び方ひとつとっても、**「はいがしら」**という結び方があって、これがなかなか覚えられなかった。手先の器用さも必要で、不器用な自分にはきつかった。
職場の雰囲気はせかせかしていた。トロトロしていると置いていかれる。先を読んで、先回りして動かないと通用しない世界だった。
体力もいる。直前の仕事は生産管理といった事務仕事だったので、力仕事とは結構違った。やっぱりきつかった。28歳だったからなんとかついていけた、という感じ。
最初から「続けられるかな」という不安があった。
3ヶ月後、突然呼ばれた
社長と一緒に現場に出ることが多い、小さな会社だった。
今思えば、社長の目に映る自分は「この仕事に向いていない人間」だったんだと思う。でも当時は、「これはまずい」という危機感はそれほどなかった。
試用期間が終わった日に呼ばれた。
「あなたはこの会社に合わない」
突然だった。その後、社労士から正式な通知書が届いて、完全に終わった。
不当だと思ったし、落ち込んだ
正直、最初は納得できなかった。
たった3ヶ月で人の何がわかるのか。不当に解雇されたと思った。
でも、結構落ち込んだ。やっぱりなという気持ちも、半分くらいあった。不安を抱えながら働いていた3ヶ月間は、自分でも「続かないかもしれない」と感じていた。その感覚は当たっていたんだと思う。
意外とすぐ次が見つかった
落ち込んだまま終わったかというと、そうでもなかった。
現場に応援として来ていた職人さんが、「うちで働かないか」と声をかけてくれた。そのまま拾ってもらって、次の仕事はすぐ見つかった。
人との縁は、思わぬところにある。
それでも、やってよかった
3ヶ月でクビになった植木屋だけど、学んだことはある。
事務や工場は「決まった手順をこなす」仕事だった。植木屋は違った。現場で状況を読んで、臨機応変に動く。その感覚を初めてつかんだのが、この仕事だった。
剪定の技術も、ひもの結び方も、体で覚えたことは今でも残っている。「植木屋で働いた」という経験は、なかなかできないことだとも思っている。
合う合わないは、感覚でわかる
今振り返ると、こう思う。
仕事が合うかどうかは、理屈じゃなくて肌で感じるものだ。
あの3ヶ月間、ずっと不安だった。「続けられるかな」と思いながら働いていた。その感覚は正しかった。会社側も同じことを感じていて、最終的に同じ結論に至った。
不安なまま仕事を続けていくのは、自分にとっても、会社にとっても、あまりいいことじゃない。
「なんか違う」という感覚を、もっと早く信じてもよかったのかもしれない。
でも28歳の自分にそれが言えたかどうかは、正直わからない。失敗して初めて気づくことは、たくさんある。