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植木屋で蛇に顔を噛まれた話。造園の仕事は危険と隣り合わせだった

生垣を剪定していたら蛇に顔を噛まれた。チャドクガのかゆみ地獄、熱中症さわぎ、そしてダンプの運転。植木屋・造園の仕事にある危険を、実際に体験した氷河期世代が正直に書きます。

生垣を剪定していたら、蛇に顔を噛まれた。

冗談みたいな話ですが、本当にあったことです。しかも、この職場ではそれが「伝説」として語り継がれることになりました。

今回は、植木屋で働いていたときに実際に体験した危険な出来事を書きます。笑い話も混ざりますが、最後は真面目な話です。造園の仕事を考えている人には、知っておいてほしいことがあります。

ちなみに舞台は、3ヶ月でクビになった植木屋の次に拾ってもらった、別の植木屋です。


親方「つかんで投げろ」

その日は生垣の剪定をしていました。

ハサミを入れていると、ちょうど目の前の高さに蛇がいました。 顔とほぼ同じ高さです。

「親方、蛇がいます」

そう報告すると、親方はこう言いました。

「つかんで投げろ」

つかんで投げろ?

内心「え?」と思いましたが、この世界では新入りが口答えする空気でもありません。やるしかない。私は目の前の蛇に、そろりそろりと手を伸ばしました。

そのとき——蛇と目が合ったような気がしました。

次の瞬間です。蛇は私の顔めがけて飛びかかってきました。

鼻の下と口の、ちょうど中間あたり。 そこを噛まれました。

蛇はすぐに離れて、どこかへ逃げていきました。


全員、半笑い

あまりのことに、私はその場でうずくまりました。

親方と仲間たちが駆け寄ってきて、口々に言います。

「大丈夫か」 「大丈夫か」

心配してくれている。ありがたい。……のですが、顔を上げてみんなの表情を見たら、半笑いでした。

笑いをこらえている人もいる。というか、ほぼ全員が笑いをこらえながら「大丈夫か」と言っている。

そのうち一人がこう言いました。

「蛇に顔を噛まれた人、初めて見た」

そりゃそうだ。私も初めてです。

幸いなことに、毒蛇ではありませんでした。シマヘビだったようです。ただ、当時の私は蛇の種類なんてわかりません。噛まれた本人としては、そこが一番の心配でした。

「親方、この蛇、毒ありませんよね」

こっちは真剣に聞いています。血の気が引いた状態で聞いています。それに対する親方の答えがこれでした。

笑いをこらえながら、半笑いで「大丈夫、ない」

……はい。

傷そのものは浅く、少し血が出た程度でした。病院には行かず、カットバンを貼っただけ。腫れもせず、傷跡も残りませんでした。少し休んで、その日はまた仕事を続けました。

この出来事は、その植木屋の伝説になりました。事あるごとに「そういえば蛇に顔を噛まれたやつがいてな」と語られることになります。


チャドクガと漆。全員かゆみ地獄

植木屋で日常的にあった危険が、毛虫と漆によるかぶれです。これはしょっちゅうでした。

特に厄介なのがチャドクガの幼虫です。

木の周りに、白い綿のようなものがふわふわと浮いていることがあります。当時の私は「フンかな」と思っていましたが、とにかくそれに触れると強烈なかゆみが出ます。

ある現場で、それが大量に湧いていました。

しかし、どうしてもそこを剪定しなければならない。みんなで覚悟を決めて、短時間で一気に終わらせました。

案の定、作業が終わる頃には全員が「かゆい」「かゆい」と言い出しました。

その日は仕事を早めに切り上げ、風呂に入るために全員で急いで帰ることになりました。

帰りの軽トラを運転していたのは先輩で、私は助手席でした。ふと横を見ると、運転している先輩の目が血走っていました。

かゆみで完全に余裕をなくした人が、ハンドルを握っている。事故を起こすんじゃないかと不安でしたが、話しかけたら殴られそうな雰囲気で、何も言えませんでした。車内は異様な空気でした。

親方の家に着くと、順番にシャワーを浴びていきます。ところが、シャワーを浴びたくらいでは、かゆみはなかなか取れません。 さすがの私も、あのときは「かゆくて頭がおかしくなりそう」でした。


あだ名は「リーサル・ウェポン」

ただ、この一件で私にはひとつ発見がありました。

私は漆やチャドクガに、比較的強い体質らしいということです。同じ現場にいても、他の人よりかぶれ方が軽い。

すると、どうなるか。

「漆やチャドクガが多いところは、お前が行け」

こうなりました。以来、危ないエリアがあると、私は鉄砲玉のように先頭を進まされることになります。

そしてついたあだ名が、「リーサル・ウェポン」

蛇の件に続いて、これもその植木屋の伝説となり、たまに語られることになりました。名誉なのかどうかは、今もよくわかりません。


熱中症さわぎと、親方の勘違い

夏の暑い日のことです。

その日は、アスファルトの脇に生えた下草をむしる除草作業をしていました。日陰などありません。全員が「暑い」「暑い」と言いながら、昼まで作業を続けました。

私も相当暑くて、顔が熱くなり、少し赤くなっていたと思います。

昼になり、みんなで弁当を食べていると、親方が私に聞いてきました。

「熱中症、大丈夫か」

ちゃんと気にかけてくれているわけです。ありがたい。

私は「大丈夫です」と答えました。……つもりでした。

そのとき私は口に氷を含んでいました。 そのせいで、うまく喋れていなかったのです。

親方には、私が呂律の回らない状態に見えたのでしょう。「こいつ熱中症になった」と勘違いして、大騒ぎになりました。

「氷を首の後ろに当てろ」 「日陰に行かせろ」

全員がバタバタと動き出します。

何のことはない、ただの親方の勘違いでした。

笑い話ではあるのですが、今になって思うのは、親方はちゃんと心配してくれていたということです。あの職場は口が悪くて笑いも雑でしたが、人が倒れることには本気でした。

そしてもうひとつ、真面目に書いておきたいことがあります。

あの頃も暑かったですが、今の夏の暑さは格段に上です。 体感で5度は違う気がします。当時と同じ感覚で外仕事をしたら、たぶん本当に倒れます。


いちばん怖かったのは、ダンプの運転

ここまでは笑い話として書けます。でも、本当に怖かったのは別のことでした。

ダンプの運転です。

それまで私は、普通車と軽トラしか運転したことがありませんでした。そこへ、ある日いきなり言われます。

「ダンプ乗れ」

とても困りました。

車高が高いので、前方の見晴らし自体は悪くありません。でも、横幅と縦幅の感覚がまったくつかめない。 狭い道に入るたび、坂道にさしかかるたび、後ろが見えないたびに、運転が物凄いストレスでした。

そして、ヒヤリとした場面が起きます。

荷台に重い荷物——たしか岩だったと思います——を積んだまま走っていたときのことです。

前の車が止まりました。私もブレーキを踏みました。

踏んだのに、なかなか止まらない。

重い荷物を積んだダンプは、思っているように止まってくれませんでした。前の乗用車に、ぶつかる寸前でした。

助手席には親方が乗っていました。もの凄く怒られました。

当時は怒鳴られてへこみましたが、今なら親方が本気で怒った理由がわかります。

ダンプで乗用車にぶつけたら、乗用車に乗っている人が危ない。

自分がケガをする話ではないのです。相手の命に関わる話です。

正直に書きますが、私が植木屋を続けられなかった理由の1つが、これでした。


これから造園の仕事を考えている人へ

最後に、経験者として正直に書いておきます。

植木屋・造園の仕事には、結構危険な作業があります。

  • 慣れない作業を、いきなり任されることがある
  • 虫に刺される、かぶれる、ケガをする危険は常にある
  • そして——自分だけでなく、周りの人を傷つけてしまう可能性もある

最後のひとつが、いちばん重いと思います。蛇に噛まれるのは自分の話で済みますが、ダンプは違います。

だからこの仕事は、安全に十分注意してやるべき仕事です。

脅すつもりはありません。緑に囲まれて働くのは気持ちのいい仕事ですし、職人さんたちは腕がよくて、人情もありました。半笑いで心配してくれるような人たちでしたが、悪い人たちではありませんでした。

ただ、「自然の中でのんびり働けそう」というイメージだけで飛び込むと、たぶん面食らいます。私がそうでした。

危険があることを知ったうえで、安全に気をつけて働く。それができる人には、いい仕事だと思います。


蛇に顔を噛まれて、全員に半笑いされる。

そんな経験、そうそうできるものではありません。あのときは情けなかったですが、今となっては人に話せるいい思い出です。

やってみることに、無駄はない。今回もそう思っています。


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